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第1話「幕開け」 1
2004/08/28(Sat) 00:00:00

 K県K市立永徳中学校。全校生徒数500人足らずの大きくもなく小さくもない部活動の盛んな中学校である。
 今日から2学期、先程体育館で始業式が終わった。
 明らかに遅刻であろうその時間に、一人の少年がその中学校の東門から憂鬱そうに入った。
 少年、幌名大輔(ほろなだいすけ)は、見た目通り憂鬱な気分だった。
 それもそのはず、彼は親の仕事の都合でA県からこのK県に引っ越してきたばかりで、クラスメートとの最初の顔合わせだったからだ。
 中2の夏休み直前にして急に引っ越しが決まり、父親と二人――母親は大輔が物心つく前に病気で他界した――で慌てて引っ越してきて友達とも十分な別れが出来ていなかった。
 この中学校に見知った友人がいるはずもなく、大輔は自分では友達を作るのは得意じゃないと思っている。
(まあ、適当に振る舞っていれば、気の合う仲間もすぐ出来るだろう)
そうは思ってもやはり少しは緊張するものだ。前に一度校長と担任に挨拶するためにこの学校に来たときはだいぶ楽だったが、クラスメートの初対面となると、全然気分が違った。
 しかも、担任の教師に言われた時間より2時間も遅く来てしまった(こっちはもっぱら寝坊だが…)。
 体育館で始業式を生徒の列の後方から眺めている予定だったが、この時間ならもうホームルームの時間だろう。
(そうだ、俺のクラスの教室、三階だった…)
 門を入ってすぐの所に東から西に向かって建っている2棟の3階建ての校舎のうち、南側の校舎を見上げた。自分のクラスである2年3組の場所を再度確認しておく(こっちを見ていた窓際の生徒と目が合ったので、軽く手を振って置いた)。
 下駄箱に靴を入れて(場所が分からなかったので適当に空いている端に入れておく)、下駄箱から渡り廊下ともいうべき通路を左に進んで校舎に入った。入ってすぐの所にある階段をゆっくりと上がり、一番手前の教室(一つの階層に3部屋の教室がある)の前でゆっくりと深呼吸した。
 そして、覚悟を決めて教室のドアを勢いよく開けた。
「どうもー。おそくなりましたぁ」
 生徒に連絡事項を伝えていたであろう先生は、急に入ってきた大輔に驚いたようだった。
「なんだ?しょっぱなから遅刻か?」
 2年3組の担任の山本浩三先生は、柔和だが威厳のある、担当教科は理科の先生だ。
「まあ、それは後にして、彼は今学期からこのクラスの生徒になった、幌名君だ。では幌名、自己紹介」
 大輔が入ったときにはざわついていた教室は静まりかえり、クラスの全員が大輔を注目していた。
 大輔は黒板に自分の名前を書いた。
(ここは適当に済ませておくか)
「A県から来た、幌名大輔です。これからよろしくお願いします」
心持ちはきはきと言って、クラスを見回した。
 大輔は、後ろの方に座っている男子と、右端の一番前に座っている女子のところで軽く目を留めたようだったが、すぐ何事もなかったかのように振る舞ったので、それに気付く者はいなかった。
「質問は後に各自でするように。幌名の席は、窓際の列だけ5人だったんで、そこに作っておいたぞ。それと、後で職員室に来てくれよ」
「うぃ〜っす」
 大輔は自分の席に向かいながら、内心では今後についてワクワクしていた。
(なんなんだ、あの2人は?これはおもしろくなりそうだな)

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